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膵がんとうつ病
2025.02.17
- コラム
何の関係もなさそうな二つの疾患ですが、昨年改定された精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5TR)では、うつ症状発生に直接的な関連性がある疾患のひとつに膵がんが挙げられています。
今から100年ほど前にはすでに、「がん」がうつ病に関連している可能性が指摘されていました。以降多数の研究が実施され、膵がんとうつ病の関連性が追認されています。
膵がんに由来するうつ病の場合は、膵がん診断の10カ月前くらいにうつ病を生じることが多いことが知られており、最近の米国のデータでは、膵がん患者62,450人のうち、うつ病が先行した人が、10,220人(16.4%)と報告されています。うつ病になってから何年も経過しているような患者さんの場合には、その可能性は相当に低いと考えられますが、膵がん好発年齢である高齢者になって初めてうつ病になった場合には、膵がんが背景に存在している可能性を考える必要があります。
では、なぜ膵がんとうつ病が直接的な関連をもっているのでしょうか。ここからはまだ仮説の段階ですが、実は膵がんに限らず、ほとんどのがん細胞が炎症を引き起こす物質を作り出しています。その物質は、脳内に入り、脳内で炎症を起こします。そして、脳内で起きた炎症の結果、脳の機能維持に重要な神経伝達物質に変化が起き、脳内での精密な神経回路の働きに支障が発生します。膵がんでは、特にこのような炎症性物質が他のがんよりもたくさん作られるため、がんの中でも膵がんでうつ病を生じやすいといわれています。
特に膵がん診療ガイドラインによる膵がん高リスク①両親・兄弟に膵がんの人がいる(いた)、②慢性膵炎・膵のう胞、③アルコール多飲、④糖尿病(特に新規発生または急な悪化)、⑤喫煙、⑥肥満などが複数あるような場合には、積極的に膵がんの確認が望まれます。