広報誌「はんてん木」
浅井ヘルスケア グループ内の出来事をまとめた広報誌です。
日本老年学会総会(日本老年医学会)参加報告

2025年6月27・28・29日に千葉幕張メッセにて開催された上記学会において、施設入所高齢者薬物療法における病院薬剤師の取り組みについて、2演題で発表させて頂きました。
最初の演題は、『病院薬剤師による認知症対応型グループホーム介入の効果』という題で、ゆりの木苑グループホーム入所者の方々に対して、病院薬剤師が居宅療養管理指導や訪問診療同行等の実施により、入所後約3ヵ月で薬剤数が有意に減り(6.1剤→5.6剤)、その後(4年間)の経過においても、薬剤数の平均が6剤以上とならなかった結果を報告させて頂きました。会場からは「個人宅の訪問ではどうですか?」や「転倒等の事故は減りましたか?」等、貴重な質問を頂きました。一方で、共通のテーマで2演題続けての発表となったため、座長の先生からは「浅井病院さんは高齢者の薬物療法に対して、特にポリファーマシー対策に非常に熱心な病院ですね」とお褒めの言葉を頂戴致しました。
次の演題は、ゆりの木苑特別養護老人ホーム(以下、特養)における取組として『病院薬剤師による特別養護老人ホームへの介入と処方提案~他職種連携に基づくポリファーマシー対策~』の口頭発表を行いました。
高齢者における薬の安全使用は重要な課題ですが、特養などにおいて一般的には保険薬局薬剤師による介入が推進されており病院薬剤師の介入はあまり報告されていません。当院薬剤師はゆりの木苑特養への介入を2021年1月から行っています。特養で行われているサービス担当者会議に参加させていただき、ゆりの木苑スタッフのみなさんからいただく情報およびご本人との面談を基に、医師へ処方提案を行っています。その処方提案において、患者状況・服薬状況など約77%がゆりの木苑スタッフのみなさんからいただいた情報であり、多職種連携は重要といえます。また検査結果に基づく提案が20%あり、病院薬剤師という環境も重要だと考えます。このような提案と医師の処方変更により薬剤数の減少がみとめられました。しかし、高齢者の安全な薬物療法のためには、単に薬剤数の減少だけではく、処方の適正化が重要であり、今後とも継続的な介入が必要と考えます。
座長の先生からは、薬剤師から医師へ処方提案したが、医師の処方変更に至らなかった理由について質問がありました。現在医師への処方提案はカルテ記載で行っていますが、提案自体が医師へ伝わっていない可能性が示唆されており、処方提案の方法については今後の課題と考えています。また、「浅井病院さんは高齢者に対して積極的にかかわっていますね、そのモチベーションは何ですか?」という質問もいただきました。国の方針ということもありますが、病院の方針・薬剤部の目標であるとともに、利用者さんのために何ができるかを考え取り組んでいるゆりの木苑スタッフのみなさんの姿勢がモチベーションにつながっています。
最後になりますが、この発表に取り組むにあたりご協力いただいた皆様、ありがとうございました。